とうめいかん
透明感のある肌が欲しい。
透明感とはなんぞや。くすみのないお肌だ。
求めるものはなかなか手に入れることができず、結果化粧で塗り隠すのが常なのだが。
最近、肌ではなく髪に透明感が出ている。
透明感のある髪とはなんぞや。
例えるならブラックタピオカである。
艶のある黒髪(※ただしヘアオイルによる)に、うっすら頭の形が透けて見える。
けして毛が少なくなってきている訳でも、髪が細くなった訳でもない。
なんか、色がついたまま透き通ってきているのだ。
同意を求めて友人に写真を送ってみたのだが「蛙の卵やん」という感想が返ってきた。あいつ許さん。
透明感……どうせなら肌に欲しかった(二度目)。
二週間くらい前からのことで、原因は不明である。
医者に行くべきか迷うが、痛みもないし抜け毛が酷いわけでもない。そもそもどの医者にかかれば良いのかわからない。
最近の医療系アプリは症状別にどういったところに駆け込めば良いのか判断してくれるらしいが、さすがに髪の毛に透明感が出ているのは症状として登録されなかった。見つかるのは薄毛ばっかりである。くそう。
見た目が不思議なことになりつつあるので、最近は外出時、ずっと帽子をかぶっている。
症状?が進んで近所の小学生から「怪異!歩くおたまじゃくし女」として都市伝説扱いされるのは避けたい。
仕事はいま在宅勤務なので、今月中は問題ないはずだ。ありがとうリモートワーク。
ただ、出社が始まったときを考えて、対策をしておかねば。さすがに社内で帽子かぶりっぱはできない。
そう思って、ドラッグストアで毛染めを買ってきた。
初めてにしてはうまく染まったように思えたが、夜風呂に入ったら綺麗に落ちていた。
2回別の会社で試すも、どちらも保たなかった。髪質が変わったようには思えないのだが、ヘアカラーでは太刀打ちできないようだ。
しかし私は諦めない。
隠したいなら被ればいいじゃない。帽子以外のものを……!
そう、ウィッグである。
ウィッグがカツラとかヅラとか呼ばれていたころは、中高年の男性のものだけだとおもっていたが、男性上。女性用、子ども用、いろんなものがあるらしい。
さてはコスプレのためかと腐った脳はひらめいたが、病気や治療で髪の毛が薄くなったり剃らなくてはいけなくなった人のために、医療用ウィッグというものがあるのだと知った。なるほど。
さて通販で3時間ほど悩んで選んだのは、肩に付くくらいのミディアムボブ、暗めのショコラブラウンで税込み2980円送料無料。
見れば見るほど何がいいのか分からなくなって、とりあえずおすすめに出ていたなかで安めのやつにした。最初だし。高いの買って失敗したくない。
で、次の休みに宅配手配を済ませてから気がついた。
受け取り、どうしよう。
当然だが配達先は自宅である。
室内で帽子かぶってるのってどうなんだろう。変なのでは?いっそ風呂上がりってことにして髪にタオル巻くか?いや時間帯まで指定しておいて風呂に入るのかお前は。そんなくだらん小芝居のために忙しい宅配のお兄さん(最近はお姉さんもいる)をお待たせするのか。
怒涛の勢いで脳みそを無駄に回転させた結果、私が選んだのは「店頭受け取りに変更する」であった。
いや、配達の人も忙しいし一瞬だから気にしないのではないかと思うけど!
こういう小さいことでぐだぐだ悩むのが良くない。本当によくない。
免許証と念のためハンコを荷物に忍ばせる。
指定した宅配会社の営業所は、土曜なのに駐車場に大して車もなく、空いているように見えた。
しかし中にはいると、荷物を出そうとする人が何人も宛名作成のタブレットで苦戦している。
時間がかかるようなので、先に受付の人に声を掛けさせてもらった。
荷物を受け取りに来た旨を告げると、係の人は名前と大まかな住所を聞き取って、バックヤードに探しにいった。
いつもはお店に行ってもあちこち動き回るから、室内でじっととどまるのが地味に苦しい。帽子に髪ほとんど押し込んでるの、目立つよなぁ。後ろで待つ人、変に思ってないかなぁ。そんなことを考えながら時間を潰していると、お待たせしましたの声とともに担当の人が戻ってきた。
ハンコはいらないが名義確認をするとのことなので、財布から免許証を取り出す。
今日は乾燥しているのに、なにか手がべたついている気がした。ハンドクリームは今日塗ってない。ハンカチでふく。
どんな箱で来るのかと思っていたが、A4の分厚い本を思わせるダンボールだった。当然だが、とても軽い。受け取って、何事もなく帰宅した。とりあえず第一関門クリア。
あとで試しに被ってみようと思う。
ウィッグをつけて生活できるかと、手入れが楽かどうかは明日以降に。